AIの次は感情の時代

急速なAI化の向こう側

10年前にはスマホさえも大して普及していなかったことを考えると、人類歴史上1番生活環境が変わったと言えるこの10年。変化のスピードが速すぎて、さらに10年後はどうなってしまうのか。仕事や生活のあり方まで、ますます変化が続きそうですが、私はAI化が進めば進むほど感情の時代に突入すると確信しています。

その理由は様々あるのですが、1つ例を挙げてみます。

感情を機械がスキャンする

HSPであり、共感力が強すぎて日々振り回されている私のような人間は、人の感情の機微を普通の人以上に感じ取っていますが、そのセンサーになっているのは「表情」や「声」だと思われます。もちろん動作など、さらに複合的な要素はあるとしても、基本的に表情や声にとても敏感です。

とすると、研究が進めば、表情や声を機械的に解析し、そこからその人の感情の方向(怒りとか悲しみとか)を人間以上に高い精度で読み取る技術が使えるようになるはずです。アメリカの有名なライターであるマルコム・グラッドウェル氏の『第1感』の中には、夫婦の会話を1時間感情分析しただけで、その夫婦の15年後を95%予測できる研究者の話が出てきます。感情を20種類に分類し、番号を振って映像を観察しつつ感情の流れを把握してく技術ですが、この種のテクノロジーが今後発展しないと考える方がむしろ不自然にさえ思えます。(1)

そういった技術がもし日常的に使用されるとなるとどうなるか。

例えば、就職・転職面接でこの技術を使用すれば、自分に嘘をつき、塗り固めて臨むのがある意味で当然となっている面接でも、的確にその人が嘘をついているのかどうか、その人が怒りっぽい人かどうか、顧客のためを思える優しさを持ち合わせているかどうかなど、目に見えにくい内面性を透かして見ることができます。

外面的な部分はTOEICのスコアはいくらだとか、FPの資格を持っているなど、わかりやすいため、確認することは今までも比較的容易でした。しかし、その人の人間性、本当に信頼できる人なのかということだけは、短時間で見るのは簡単ではなかったはずです。しかし、これにより、コンプライアンスを守れなさそうだとか、人間関係で悪影響が大きそうだとか、会社のカルチャーに全く合っていないとかそういった人材を採用するリスクは大きく低下しそうです。

プライバシーの問題などもあり、一人一人の感情をテクノロジーを用いて見ることが、どこまで合法的に使用されるのかは別の議論になってしまいます。ただし、AI化すればするほど、感情にフォーカスが当たるのは間違いないと考えています。

ティール組織の強烈な存在感

また、全く違う観点から感情にフォーカスが当たる要因として、ティール組織の台頭があげられます。ティール組織の詳細な説明はここでは省きますが、端的に言えば、縦の指示系統がないフラットな組織で、お互いの信頼に基づいた主体性でそれぞれの役割を担う組織です。ここ数年、ヒエラルキーに基づいてきた従来のモデルに代わる新しい組織の構造ということで脚光を浴びています。

では、ティール組織が台頭すると、なぜ感情が注目されるようになるのか。それは、ヒエラルキーからティールに移行すると、そこで必要とされる感情的な資質が大きく変わってしまうからです。

ヒエラルキーは、上の階層に責任や権限が集中する性質上、「上の言うことに従う」ことが最低限求められる要素となり、結果として上はどうしても独裁的な方向へ人間性が傾きやすく、下は自分に責任や権限がないので言われるがままの思考停止人間になりやすい。これは、ヒエラルキーというOSに従う以上は、大なり小なり生じてしまう、構造が作り上げる人間性のようなものでした。

しかし、ティール組織はそのOS自体の変更を意味するので、アプリの仕様自体に大幅な変更を求めます。ティールは階層がないため、ヒエラルキーに見られる上述のような権威主義的要素は真っ先に必要なくなります。むしろ邪魔になります。人の上に立ちたいとか、出世したいという強烈な欲望は、それまでのOSには最適に機能する要素でしたが、ティール組織では逆に問題の種になります。その代わり、周りを信頼することや自分で考えることが大いに求められるOSの仕様になっています。

そうなると、人間一人一人の内面性が今までと変化することを要求されるため、それぞれの持つ感情について考えざるを得ません。つまり、ティールの台頭は感情の時代を加速させると考えられます。

教育界まで変わらざるを得ない

また、社会がこのように変容した場合、当然社会に出る準備をする学校教育のあり方は大きく変わります。今までの学校教育は、社会自体がヒエラルキー組織であったために、「先生の言うことに従う」従順な生徒が評価されてきたし、そう教育するのが善しとされてきました。

しかし、社会にティール組織が増えた場合、あるいは就職や転職でその人の内面性を細かく見られる時代になった場合は、今まで「言うことを聞いているかどうか」という形だけ見れば良かったものから、生徒一人一人の内面的な特性にまで教育の範囲を拡大することになるのかもしれません。人と良い信頼関係を築くにはどうしたらいいのかというような、人生で1番重要でありながらも学校教育で一切教えてこなかった内容も、社会人としてティール組織で生きていくのであれば、学校教育で教えざるを得ないでしょう。

既に、Youtuberなどの若者たちの配信の文化は、個人の感性、芸術性を重要視する方向に流れているように感じます。感情を殺し我慢を美徳と捉えなければ社会が成り立たなかった時代から、創造的、主体的な感情が文化の中心になっていく時代への移り変わりが待ちきれません。

AIの次は感情の時代②

2019年8月16日

参考・引用
(1)マルコム・グラッドウェル『第1感』光文社、2006年

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IQ155オーバーだが、自信があるのはEQ(心の知能指数)の方で、繊細な感受性の持ち主。 大学時代に週末はあらゆる大学生と人生を語り合うことに費やした結果、人を見下していた尖り切った人生から、人の感情を共感し理解する相談役の人生へとコペルニクス的転回を果たす。 これからの時代は感情の時代になると確信しており、感情のあり方が幸せに直結するとの考えから、複雑な感情の流れを論理的に整理することに挑戦している。 モットーは Make the invisible visible