一般的に、人に依存するのは良くない。自立してこそ一人前だと言われます。共感力が高いため、共感に重きを置きやすい上に、マイノリティである生きづらさを抱えやすいHSPにとっては心が痛い内容です。
また、HSPの場合は周りの人間関係からダメージや疲れを負いやすいため、より一層自立が求められる…というのが一般論なのですが、個人的には、相互依存の生き方は選択肢として大いにアリだと思っています。
何を隠そう私自身が精神的に周囲と相互依存的な関係を築きながら生きているからです。何でもかんでも共感する関係を周囲と築きながら生きています。経済的には別として、一般的に期待されるように精神的に独りで自立できるほど強くないという自覚があるからです。
HSPでしっかりと自立している方々を見ると、とても感心します。おそらく自分にはできません。弱くても、信頼できる人たちと共感し合い支えながら生きるというのが自分のスタイルです。
自立するのが当然でしょ…?
それでは、多くの人が、誰かに精神的に依存しながら生きることに否定的な理由を考えてみます。私が思いつく範囲では大きく2点です。
1点目は、自立はカッコいい、依存はカッコ悪いという感覚的なイメージをそもそも多くの人が持っていること。それが考えるまでもなく当たり前というレベルで染み付いていることが挙げられます。それが大人として当然だし、スマートに見えるというわけです。
これについて考えると、私の場合は、自分は経済的にはともかく、精神的にはとても自立なんか出来ない弱い人間ですので自立は諦めています。精神的に自立できないことがそこまで恥ずかしいことだとは思いませんし、そういった人たちで相互に共感しながら生きていくのは何も害がないと思っています。
単純に価値観の違いのような気がします。どちらが正解で白黒つけずとも、合う生き方を選択すればいいのではないでしょうか。
難しすぎる相互依存
2点目は、精神的に依存し合い、かつお互いがWIN-WINの関係ということに現実味を感じないからなのではないかと思います。
特にHSPである場合、相手の機嫌や状態によって自分の気持ちが大きくブレるので、精神的に依存し合ってかつ安定感があるというのは、イメージしにくいのかもしれません。
そう考えると、人と距離感を保ちながら自立しつつ生きていくのが現実的な選択肢になるという結論自体はよくわかりますし、依存という言葉に否定的になるのも頷けます。
相互依存が良い意味で成り立つ条件
それではどうしたら健全な相互依存が成り立つでしょうか。これまでたくさんの人間関係を見てきましたが、その条件は極めてシンプルだと考えています。まず、それを説明するために必要な概念を述べます。
アメリカの心理学者であるアダム・グラント氏が人間にはギバー、テイカー、マッチャーの3タイプがあると、自著『GIVE &TAKE 「与える人」こそ成功する時代』で述べています。
ギバーは自分よりが受けるよりも相手に多く与えようとする人
テイカーは相手に与えるよりも自分が多く受けようとする人
マッチャーは相手に合わせてバランスを取る人
というわかりやすい構図で、もちろん同じ人でも相手や状況によっても変化しますが、基本的にどれに近いかというものはあると思います。さて、この概念を元に相互依存について考えるとどうなるでしょうか。
私の結論としては、ギバー同士でない限り相互依存は成り立たないと思っています。また、組み合わせとして、ギバーとマッチャーの関係が変化して、ギバー同士になるというパターンも考えられます。
ただし、どちらかがテイカーの時点で相互依存という形は崩れ、奪おうとする力学に関係は支配されてしまうでしょう。特に、見てきた中で一番悲惨だと感じるのがギバーとテイカーの組み合わせ。一方的に与える側と奪う側に分かれてしまう悲劇が起こる可能性があります。
テイカー同士だといわゆる共依存という大変な状態、テイカーとマッチャーの組み合わせも、とても依存し合える関係には遠そうです。
新しい選択肢
相互依存が難しいのは、ギバー自体が少ない中でギバー同士が出会わなければ成り立たないからではないでしょうか。そして、それを成り立たせる第一歩はもちろん自分がギバーになることです。周りに何か変化を願っても何の意味もありません。
私自身が、テイカーだった時期やマッチャーだった時期を通過していますが、人との関係性において一番幸福度が高いのは圧倒的にギバーになってからだと感じています。
立派に精神的自立をするのは素晴らしいことですが、もっと共感や相互依存の中で生きていきたいという方は、新たな選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。
GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 三笠書房 電子書籍 Kindle版
参考・引用
アダム・グラント『GIVE &TAKE 「与える人」こそ成功する時代』三笠書房、2014年
コメントを残す