最近、幸福と成功の違いについてよく考える。
人からの相談に乗っていると、この人は自分の中にある幸福という軸を中心に生きているんだなーという人と、他人から見たときに成功していると見られたい(あるいは失敗したと見られたくない)という軸を基準にして生きてるんだなーという人に別れる。
もちろん、どちらが善でどちらが悪という性質のものではないのだが、自分の人生はどっちの軸の上で成り立っているのかということを考えることは有意義だと思うのでまとめてみることにする。
幸福と成功の違い
違いについて、私なりに表現するとすれば、「幸福」は自分がそう感じているか否かという自分軸のニュアンスが強く、「成功」は周りがそう見ているか否かという他人軸のニュアンスが強いところだと思う。
幸福についていえば、周りが自分のことを幸せそうだと考えたとしても、自分は不幸だと思っていたら幸せではないはずだ。逆に、周りが自分のことを幸せそうには見えないと思っていても、自分としては幸せならば、それは幸せだと言える。
さて、成功はどうだろうか。
周りが自分を成功者だと考えている場合は、自分が成功者だと思っていなくても、一般的には成功者であるはずだ。例えイチローが謙遜に、自分は成功者なんかではないとインタビューで語ったとしても、誰もそれを真に受けたりはしない。
また、誰も自分のことを成功者だと思っていないのに、自分としては成功者だと思ってたとしても、それは成功とは言い難い。
このように、幸福と成功は軸がはっきり違うが故に、どちらをより追いかけるかで人生は大きく変わる。
わざわざ「幸福」や「成功」という言葉を用いなくても構わない。いずれにせよ、人は自分の中にある理想や基準を追いかける部分と、周りからの評価を追い求める部分の両側面があるはずだ。
自分の中の幸福を求めて生きる
幸福を目指す選択をするのなら、自分がどういう時にどのような感情を持つかに敏感になって生きる必要があるし、自分なりの信念や哲学が必要になるだろう。
少なくとも、どういう写真を撮ったらインスタ映えするだろうかとか、どういう投稿をSNSに載せたらいいねがもらえるだろうかという観点、つまり、自分の体験そのものよりも自分の体験への評価を気にしてしまうとすれば、何が幸せかを感じ取るのは難しい。
その人は「自分の体験における自分自身の感情」に集中しきれていないからだ。
そして、現代のような通知社会では、満天の星空にただひたすらに酔いしれることも、とても美味しいと思ったものをじっくり味わうことも、以前とは比べ物にならないほどに難しくなっている。
素晴らしいものに出会ったその時でさえも、通知が鳴り止むことはない上に、素晴らしいと思った瞬間に、それ以上味わうことよりも、どう写真や動画に収め、SNSに投稿するかに関心がシフトしてしまっている。
また、自分の幸せを追求する上では、周囲からの期待や、周囲との比較も邪魔になってくる。現代社会のシステムは、否が応でも周囲と比較競争する方向へ私たちの感情を向かわせてしまう。
そうすると、自分軸の幸福よりも、他人軸の成功(勝ち負け)に目が行きやすくなる。
こういった背景を考えていたら、ヴィパッサナー瞑想のように、他者との交流を一旦排除するような長期間の瞑想プログラムに参加する人がいるのも納得だ。
幸福を追求するなら、どうしても自分の感情に集中する必要がある。自分の感情の声を聞く必要がある。周りの期待とか、こうでなければならない、こうすべきといった、これまで埋め込められてきた義務感ではなく。
成功というストイックな生き方
成功に目を向けてみよう。もし、自分は成功したいというモチベーションが強いということは、それを判断するのが周囲の人間である以上、他人の目を軸にして生きることになる。
もちろん、成功を別に目指していたわけではないが「結果として」周りから成功者と見られる場合は別だ。その場合の成功は目的ではなく付属品に過ぎないし、その人が目指していたのは自分軸の何かだと思われる。
我々は、成功という言葉をわざわざ使わなくとも、他人軸に自分の人生を乗せてしまっていることがあまりにも多い。
もし周りからどうしたらよく見られるかとか、どうしたら評価してもらえるかとかという発想が強いとするならば、おそらくそれは幸せより成功を目指している。
それはあからさまな仕事における社内競争のような場面だけではない。
日本では夫婦の不和があっても、世間体を考え離婚はしなかったというケースが多い。こういった発想も「失敗したと見られたくない」という完全な他人軸で、時に本人の幸せが離婚の先にあったとしても、他人軸が強い場合はそういう行動は取らない。
お察しの通り、成功者と見られることや失敗者と見られないことを目的とした場合は、一生人の目を気にしなければいけない。意識はしていなくとも、すでにそれが癖になっている人も多いだろう。
どこに進むのかを自分で選択する
幸福や成功の難しさをそれぞれ考えたが、それなら結論はどこにあるのか。ぶっちゃけ、結論は自分で考えてもらうしかない。
この記事が目指すところは、成功と幸福のどっちが優れているのかのようなわかりやすい結論ではなく、あくまで読んだ人自身の頭で生き方を考えてもらうことにある。
さて、あなたは幸福を目指すのだろうか、成功を目指すのだろうか、それとも違う何かを見ているのだろうか。
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